令和3年7月より、曽根照喜先生の後任として日本骨形態計測学会の理事長を拝命いたしました。よろしくお願い申し上げます。本学会は、昭和54年に新潟大学医学部整形外科学教室の髙橋榮明先生が第1回骨形態計測ワークショップを新潟市で開催されたことに始まり、骨形態計測研究会を経て、平成2年に日本骨形態計測学会に発展いたしました。このような伝統ある本学会の理事長に就任させていただき、大変光栄で名誉なことでありますが、同時に大きな重責を感じて身の引き締まる思いです。本学会を築いてこられた諸先輩方の多大な業績と伝統を継承し、ご指導を仰ぎながら、会員の先生方からのご意見やご要望を伺いながら、存在意義と魅力のある唯一無二の学会になるよう甚だ微力ながら精一杯頑張りたいと思っています。
本学会の目的は、「骨の研究を主に形態学的方法およびそれに関連する方法で推進し、その進歩発展に寄与すること」です。本学会は、当初、組織切片から骨の構造や動態を観察し、計測する手法に基づいた研究が中心でした。しかし、昨今では、細胞免疫学的、分子生物学的な手法に基づいた研究も多くなってきました。画像解析法や成分分析法などが発展し、研究手法が多岐に渡ってきました。骨代謝学の基礎研究の進歩には目覚ましいものがあります。本学会の目的を達成するために、骨の形態を解析する新しい方法の開発・応用、既存の手法を普及・発展させていければと思います。骨疾患の病態や骨粗鬆症治療薬の作用機序などについては、未だ不明な部分が多くあります。この多くの未解決な課題に対して、骨形態計測法を用いて解明していくことで、学問の発展に寄与できればと思います。
本学会では、個体レベルから、組織、細胞、分子レベルまでの議論が活発に行われるようになりました。このマルチスケールで骨について議論できるのは本学会の大きな魅力です。もうひとつの魅力は、医・歯・薬・工学、基礎医学・臨床医学、内科・整形外科・産婦人科・放射線科など、様々な分野の枠を超えて議論できることです。このような本学会の意義と魅力を若手にどう伝え、継承していくかが大切です。学会から社会への発信力を高めたいと思っています。人材育成と教育、研究成果の社会への発信は学会の持続的な発展において重要です。現状での取り組みとして、本学会では、少人数でハンズオンセミナーを開催し、参加者に組織切片の観察や計測を習得していただいています。若手研究者賞や学術奨励賞を設け、若手研究者の目標や励みになるよう努めています。毎年の大会長のご尽力により、学部学生や大学院生は無料で学会に参加できるようになっています。研究の成果は、和文でも英文でも論文として、本学会雑誌や本学会のofficial journalでもあるJournal of Bone and Mineral Metabolism(JBMM)に投稿できるようになっています。近年、本学会員の平均年齢が高くなっています。若手会員の増加が必要です。若手や他の領域の先生方に興味をもっていただけるようなセミナーやシンポジウムなどを企画していきたいと考えています。
日本骨形態計測学会のさらなる発展にむけて尽力する所存です。会員の皆様には、今後ともなお一層のご支援とともにご指導、ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。また、骨の形態計測に興味を持っておられる方がいらっしゃいましたら、是非とも本学会の活動にご参加いただけましたら幸いです。 |